アルビノとは?

ここで取り上げているのは、それぞれの症状には軽重があるものの、全身の皮膚の色素欠乏(白色皮膚→日光による紅斑を来しやすい)、頭髪に加えて眉毛や睫や体毛などを含む全身の毛の色素欠乏(白色~灰色~金色~茶色)、虹彩(瞳)の色素欠乏による羞明(まぶしがること)及び眼底網膜の色素欠乏による視力低下(0.5程度の軽度視力低下~0.05程度のロービジョンレベル)があるものの知的な問題は全くなく※、他の合併症もない全身型の眼皮膚型白皮症です(*)。

色素(メラニン)を合成するためのチロジナーゼという酵素の働きが弱いのが主な原因で(働きを助ける物質などに原因がある場合もあります)、症状や遺伝子などに基づく様々な分類方法がありますが、症状からチロジナーゼ陰性型(成長してもほとんど色素が出てこない症状が強いタイプが多い)とチロジナーゼ陽性型(成長にともないある程度は色素が出てくる症状が弱いタイプが多い)に分類されるのが一般的です。
なお、医学用語の1つとして使われてきた白子症は差別的なイメージが含まれるため、最近は使われなくなってきています。

※不適切な教育方法により十分な学習機会が得られなかったり知能検査の実施方法などに配慮が欠けていたりすることによって、事実を反映しない低い数値が出てしまうことがあります。
*眼症状のみの眼白皮症、皮膚の色素欠乏が限局性に生じるまだら症、他の合併症がある各種の症候群についての説明とは異なりますので御注意下さい。

遺伝子と遺伝形式は?

幾つかの遺伝子の変異が原因となることが知られています(今後も新しい遺伝子が発見される可能性があります)。しかし、どの遺伝子が原因なのかを症状のみから見分けることはできません。
いずれの遺伝子が原因であっても常染色体劣性遺伝です。
すなわち、「(多くは親戚にアルビノの方がいない)原因となる遺伝子の変異を片方のみ受け継いでいる人(このような人を専門用語で保因者と言います)」が御両親で、その両方から遺伝子の変異を受け継いだときにアルビノになります。
この遺伝子の変異は基本的には先祖代々延々と受け継がれてきたものですが、あまりにも昔から受け継がれてきたものですので「どこそこの特定の家系の問題」などではなく、人類全体が共有しているごく普通のもので、決して少なくない人々がこの遺伝子の変異を片方受け継いでいるのです(突然変異もあります)。

アルビノと保因者の頻度は?

アルビノの頻度は1~2万人に1人程度と推定されています。
原因となる遺伝子を区別せずに保因者の頻度を算出すると、50~70人に1人程度になります。つまり、保因者とは珍しくも何ともないごく普通の人なのです。

次子や次世代などがアルビノになる率は?

1)アルビノの児の弟や妹
通常の「御両親のどちらもが保因者と考えられるケース」では弟や妹がアルビノになる率は1/4(=1/2×1/2)です。

2)症状のない兄弟姉妹の次世代
症状のない兄弟姉妹が保因者である率は2/3で、症状のない普通の結婚相手が保因者である率は原因となる遺伝子の違いを無視してかなり高く見積もっても1/50程度ですので、次世代がアルビノになる率は1/300程度(=2/3×1/50×1/4)より遙かに少なくなります。したがって、特別に心配する必要はありません。
御両親の兄弟姉妹などの他の血縁者の次世代は、さらに率が低くなりますので、同様に特別に心配する必要はありません。

3)本人の次世代
症状のない普通の結婚相手が保因者である率は原因となる遺伝子の違いを無視してかなり高く見積もっても1/50程度ですので、次世代がアルビノになる率は1/100程度(=1×1/50×1/2)より遙かに少なくなります。したがって、やはり特別に心配する必要はありません。

4)特別なケース
アルビノの方やアルビノの方の兄弟姉妹を始めとした血縁者同士で結婚なされる場合は、それなりの御相談(遺伝カウンセリング)が必要になるかも知れません。近くの専門医療機関をお訪ね下さい。
なお、アルビノの方同士が結婚なされる場合でも、原因となる遺伝子が複数あるため、次世代が必ずアルビノになるわけではありません。症状の軽重が変わる可能性もあります(軽くなる可能性もあります)。同様に、近くの専門医療機関をお訪ね下さい。

遺伝子検査の必要性は?

症状からアルビノの診断が可能で、どの遺伝子が原因でも治療法や遺伝に関する考え方が変わりませんので、特別なケースを除いて一般に実施する必要がありません。

お叱りを承知で最後に・・・

アルビノとは病気なのか体質に過ぎないのか・・・特に本人がどう思うかが重要です。
眼の症状が軽い場合は、大きくなったら本人に正しく説明することにして、小さいときは「父方の曾祖父が白人だった」などという説明で周囲の理解を上手に得ている御両親もおられます。誰よりも御両親を始めとした御家族、そして医療関係者や学校関係者などの正しい理解が求められます。
この文書が少しでもアルビノとその御家族の方々のお役に立つことを祈っています。

文 責:石井拓磨
 川口工業総合病院 小児科部長
  〒332-0031 埼玉県川口市青木1-18-15
 千葉県こども病院遺伝科(非常勤;第1・3・5木曜日)
 千葉大学看護学部(非常勤講師)
 東邦大学佐倉看護専門学校(非常勤講師)
  全ての遺伝関連疾患に関する診療・療育・遺伝カウンセリング
  全てのサポートグループに対する支援
  障害児(者)の将来を担う全ての人材に対する教育
 ※お近くの適切な専門医療機関を御紹介することも可能です。

※2014年9月現在の情報に更新しました。

アルビノと遺伝について” に対して1件のコメントがあります。

  1. 福井作新 より:

    後天性アルビノは存在するのですか?

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